任意団体「岡山県学童保育連絡協議会」

「発達障害児支援の作業療法士」発掘育成講座の開催

活動

任意団体「岡山県学童保育連絡協議会」

代表者 糸山智栄 様

設立の経緯と主な活動内容

1978年2月より活動を開始。岡山県内において、学童保育の普及・発展を図り、子どもたちの健全育成と保護者の就労保障を目的に活動を続けている。主な活動内容としては、岡山県学童保育研究集会(秋)、地域エリアごとの学習会・交流会などを企画・実施。2016年度から、作業療法士連携事業を開始し、作業療法士による講座や訪問コンサルを試行・実施中。

助成事業活動に込めた思い

〜「発達障害児支援の作業療法士」発掘育成講座の開催〜

地域共生社会を見据えて、医療現場から「介護、福祉、地域」支援が期待されている昨今、2016年度から当会で開始した「作業療法士と学童保育指導員」の連携による発達障害児支援の試みは、大きな効果をあげ、2017年度からは全国へと広がっていった。糸山代表は、「この取り組みを続けるに従って、あらためて作業療法士の視点は子どもたちの支援に役立ち、何よりも学童保育指導員たちのモチベーションやチーム力のアップにつながり、今後さらに大きな可能性を秘めていると確信した」と話す。
 ただ当時、連携事業を開始するにあたっては、どの都道府県でも発達障害領域における作業療法士の少なさが大きなネックとなっていた。そこで全国に先駆け、岡山で育成を試み、学童保育をはじめとする子ども分野に携われる人材(作業療法士等)を発掘・育成し、将来的には小児から高齢者までサービスを提供できる人材の育成につなげていきたいと考えた。

活動の具体的内容

〜地域(子ども)OT(作業療法士)スキルアップ講座の開催〜

●参加対象
作業療法士、その他子どもに関わる専門職、学童保育所の所長クラスの指導員。※岡山県内はもちろん、高知県、岐阜県、広島県など全国から受講者が参加。

●講師陣
首都大学東京人間健康科学研究科教授、仙台青葉学院短期大学リハビリテーション学科長教授、NPO法人はびりす設立者・代表理事など、全国から意欲的に活動しているエキスパートを招聘。

●開催概要/会場
年4回1日4講座6,000円
国際交流センター、きらめきプラザ、県立図書館等

●同行研修・テキスト作成
学童保育等の地域支援への同行研修を随時(2時間程度)開催。
作業療法士の方には、同行研修補助費(1回5,000円)を支給(報告書作成が必須)。また、育成用のオリジナルテキストを作成、全国に配布している。

活動の効果(現状と今後)

1:現在、当会が取り組み、ニーズが高まっている「学童保育コンサル」に参加できる作業療法士が増え、指導員と作業療法士が連携して特性のある子どもたちを支援することで、指導員の保育力が高まり、その結果、どの子どもも安心して放課後を過ごすことができるようになった。加えてグレーゾーンの児童の不適応予防も可能となった(保護者が安心して仕事ができる)。

2:子ども、特に学童保育という「集団」に焦点をあてて学ぶことは、介護予防との共通点も多く、幅広い年齢や地域活動に総合的に関われる作業療法士を育成するための第一歩となった。

3:「身体・精神機能」「生活」「作業(仕事・遊び)」「環境(人・物)」に着目する作業療法士の視点を、他のリハビリ職、心理職、教員、保育士などに知ってもらうことができた。

4:発達障害児支援ができる作業療法士が増えることで、家庭と地域と病院の架け橋となる。

5:全国的にも先進的な取り組みとして注目されており、全国発信していくことで今後、岡山に優秀な人材が集まる起因に成り得る。

6:出産等のため離職している作業療法士や発達障害領域以外の作業療法士が広く発掘できる。

現場の声、今後の展望

当活動においては「アメリカの学校には作業療法士がいるのを知り、学童保育でも作業療法士の知識と技量が役に立つのではと考えたのがきっかけでした」とあらためて経緯を振り返る糸山代表。
 「学び」が中心となる学校現場に対し、学童保育は児童たちが学年の壁を超えて、ひとつの集団となり、学習や屋内外での遊びなど、多様な体験をしている。そんな中で指導員たちは、一人ひとりに分け隔てなく接しながら、同時に発達障害児への適切な対応も求められるだけに、過分な負担が掛かっていると推測されていた。実際、現場からも専門家から直接アドバイスを受けたいというニーズが多く、作業療法士の支援は急務だと認識されていた。
 もともと作業療法は障害者や高齢者の日常生活をサポートし、やりたいことを実現していくために、遊びや家事、創造活動など様々な行動をアレンジし、実践していくもの。それゆえに「学び」以上に「生活」の要素が強い学童保育には最適な支援方法とも考えられる。

ある作業療法士からは…
「指導員と一緒になって子どもたちの行動を手助けすることで、自然な形で発達を促していくことができた」。

ある指導員からは…
「楽になった。気持ちに余裕ができて、怒らなくなった」
「自信を持って対応することができるようになった」
「楽しくなってきた」
といった感想も寄せられた。

最後に糸山代表は、今後の展望をこう話す。
「子ども領域という将来の仕事像が見えることで、参加費を払ってでも学びたいという目的意識の高い作業療法士が増えることを期待しています。彼ら彼女たちの向上心を喚起しながら、他のリハビリ職や心理職、教員や保育士等が作業療法に関心を持ち、前向きに学び、未来を作り出す活動を継続していきたいと考えています」。
 作業療法士のニーズは高く、活躍の場はさらに広がると予想されている。人材不足の悪循環を断ち切る上でも当会の発掘・育成への取り組みは今後も各方面から注視されている。

DATA

設立年月日 1978年2月
代表者名  糸山智栄
連絡先
住所 〒700-0867 岡山県岡山市北区岡町14-9 岡町ビル201
電話 090-7131-5672
Eメール gakudou@mx6.tiki.ne.jp

設立経緯

岡山県内において、学童保育の普及・発展を図り、子供の健全育成と保護者の就労保障を目的とする。