特定非営利活動法人 東備「ユートピア」

障がい当事者によるピアサポート活動

活動

特定非営利活動法人 東備「ユートピア」

代表者 片山健理事長様
取材対応 大谷俊之様

設立の経緯と主な活動内容

共同作業所「ユートピア」は30年来、精神障がい者の通所の場として、地域住民や家族会に支えられながら活動してきた。2006年「障害者自立支援法」の施行にともない、新体系の福祉サービスを実施するため、備前市、赤磐市、和気町(岡山東備エリア)の新規相談支援事業所「パレット」の開所を機に、「ユートピア」も家族会運営から独立し、「NPO法人・東備」として運営してきた。今後はさらにピアサポートの拡充を目指すため、2019年3月にピアサポート活動「夢ねっと東備」を立ち上げた。

助成事業活動に込めた思い

〜障がい当事者によるピアサポート活動〜

当事業所の利用は精神障がい者、発達障がい者が主であり、福祉サービスを利用しながら就労した方や、結婚した当事者もいる。現在はこうした方にピアサポート研修会への参加を通じて、サポーターの養成に取り組んでいる。また自立訓練事業の一環として地域の商店街の空き店舗を活用し、当事者と住民ボランティアで駄菓子屋を運営中。当事者相互の相談機能や地域理解を促進していく場として、施設外にこうした活動が維持できる仕組みが必要と考えている。

※ピアサポートとは
同じ問題を抱える者が集まり、それぞれ自分の体験や行動、考えなどを披露し、互いに語り合うことにより支え合うこと。ピア(仲間、peer)という用語のとおり、仲間同士が相互に体験や感情を共有し、支援しあう精神的支援活動を主体とするもので、それによって問題解決の方策を見つけ出していくことを目的としている。

活動の具体的内容

1:ピアサポーターによる当事者への支援、地域移行支援活動

ユートピアの自立訓練事業プログラムの一貫として、当事者による生活自立に向けた支援、コミュニケーション講座や調理講座、買い物支援、余暇支援など、当事者相談員の常駐によるピアサポート活動をに取り組んできた。
特に長期入院者の地域移行支援(グループホームへの体験入居時の支援)では、服薬の自己管理に向け、その必要性や副作用体験など、当事者ならではの目線で支援してもらうなど、有益な効果が見られた。
また今期も2ケースの体験利用があったが、児童措置施設から地域へ移行を開始する当事者の支援では、日用品の買い出しや美容院の利用、地域資源の案内や同行、電車利用への同行支援、携帯電話購入後の使用方法、服薬管理など、地域で暮らすための支援に大きな役割を果たしたと考えている。

2:当事者による理解促進事業、相談支援事業

うつ病、発達障がいのご夫婦による、美作大学、関西福祉大学での講演を実施。学生からも当事者の生の声が聞ける貴重な時間として、評価されており、今後も開催を依頼されている。またアルコール依存、視覚障がい、精神障がいなど多様な当事者による「街角相談会」を地域の店舗を使って年6回開催した。

3:当事者活動を学び、知るための視察研修事業

ピアサポートについての知識を深めるため各研修会への参加・視察を実施した。

●全国精神福祉家族会「みんなねっと」研修会
2018年11月26日(月)・27日
場所:神戸ポートピアホテル/神戸国際会議場

●小規模作業所「つどいの杜 まりも」見学派遣
倉敷市真備地域で活動する当事者活動支援を推進する団体の視察。
2018年12月20日(木)

●「ピアから変わる倉敷の精神保健」研修会参加
2018年12月27日(木)

●ピアサポートとリカバリーの祭典 きらりの集い
分科会「ピアサポーターの現状と課題」「ピアのぶっちゃけトーク」
2019年1月13日(日)・14日(月) 場所:島根県民会館

●働く障がい者のための交流拠点「たまりば」研修会
「わたしらしく、きらりと生きるとは」
2019年1月26日(土) 場所:岡山大学

4:当事者交流事業

ユートピアから就職した方の余暇支援の一貫として立ち上げた当事者の集い「e-off会(年5回開催)」の運営を支援し、参加者の意見から企画をまとめたり、案内チラシの作成などを実施。また岡山市から、ピアサポート活動を精力的に実施している団体を招聘し、意見交換会を開いた。

活動の効果、今後の展望

「障がい当事者による地域相談機能の充実。地域店舗の活用による障がい者理解の促進。当事者活動の情報発信、大学と連携した講演会などは反響もあり、これからのピアサポート拡充につながる手応えを感じた」と大谷俊之責任者は感想を述べる。今後、「夢ねっと東備」として視野に入れている活動内容は以下のとおり。

●当事者交流会の開催(隔月1回)
ピアサポート団体としての基盤を固めるため、2か月に1回程度、当事者コアメンバーによる交流会・学習会を開催。まずはお互いを知り、ピアサポートに関する情報交換を進めていく。

●理解促進活動
従来から取り組んでいる美作大学、関西福祉大学での講演活動に加え、2019年度は新たに備前緑陽高校の介護福祉実習において理解促進授業を開催する。

●e-off会の運営支援(隔月1回)
「ユートピア」から就職した方の余暇活動支援を目的に「e-off会」の運営支援を行なう。「休日の過ごし方がわからない」「職場以外で一緒に過ごす仲間が欲しい」といった当事者の声から設立に至った当会の運営を通して、働きながら地域で生活している方同士のつながりが広がることを期待している。

●Facebookでの情報発信
県内外のピアサポート団体の情報や企画案内、地域のサロン活動の案内、研修会の案内など、当事者が参加できる様々な情報を当事者中心に発信していく。

●東備地域自立支援協議会ホームページの更新
自立支援協議会、当事者家族部会への参加や各部会活動の情報更新などを活動の一環として継続的に取り組んでいく。

DATA

設立年月日 2006年10月
代表者名  片山 健
連絡先
住所 〒705-0021 岡山県備前市西片上193-1
電話 0869-63-4329
Eメール palette@mx35.tiki.ne.jp

設立経緯

精神障害者の通所の場としてあった共同作業所からスタート。障害者自立支援法の施行に伴い、法人格取得による新体系の福祉サービスを実現するため、和気町の相談支援センターの職員有志によって設立。